君が好きでたまらない!
 ひとしきり泣いてメイクも落ちてしまっていたので、カツラを外してメイクを綺麗に落とす。

 魔法がとけていくみたい。

 浮気相手から裏切られた妻に変身。元の自分に戻るにつれて、段々と惨めになる。あぁ、また泣いてしまいそう。

「佳織、私が言い出したことで、傷つけてごめん」

「ううん、いいの。私以外の他の人だったかもと思うと……キツいけど……」

「これからどうするか、どんな選択をしても、お姉ちゃんは佳織の味方だから。……ていうか、新さんたら何してんのかしら! 思惑と違う!」

「お姉ちゃん?」

「ううん、気にしないで! ちょっとひとりごと。新さんのこと、嫌いになった?」

 荒ぶる姉に驚きながら、その問いに真剣に考えてみる。結婚する前からずっと新さんが好きだった。ずっともっと触れてほしくて、好かれたくて、でもうまくアピールできない私。家になかなか帰宅しない新さんのせいもあるけれど、もっと話し合えば、彼だって今日みたいに応えてくれたのかもしれない。

 浮気は許せない。裏切りはきっとこの先も許すことはない。だけど。

「……デートしてみて、私、新さんのこと、やっぱり好きだって、思って……。浮気は、許せないけど、つ、辛いけど本当のこと話してみる……。だ、騙してたって知ったら、もっと嫌われちゃうかもしれないけど……」

「そ、その心配はない!」

 ここにいるはずのない人の声がメイク室に轟いた。部屋の入り口には、新さんが息を切らして立っている。

「新さん?」
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