君が好きでたまらない!
 ***

「いってらっしゃい! 新さん」

「うう。奥さんが可愛すぎて出かけられない」

 私たちの夫婦生活は、なんだかまた新しく始まったみたいに、初々しい。
何故かというと、私の好意を知った新さんが、ちょっとしたことで照れまくるからだ。

 散々ソファでイチャイチャして、秘書の森川さんから催促の電話が鳴りやまないので、やっと仕事に出勤することになり、見送るため玄関に行く。そこで「いってらっしゃい」というだけで、また、照れてぎゅうぎゅうに抱きしめられてしまった。

「あ、新さん、時間が……森川さんが困っちゃう」

「あぁ。わかっている。でも佳織がいけないんだ。そんな可愛い顔でいってらっしゃいなんて言われたら、抱きしめるしかない」

 毎朝この調子だ。ひとしきり瞼や額、頬に唇にキスを落として、お決まりの注意事項を述べていく。

「佳織も気をつけて! 変な男に絡まれないように。お義父さんの事務所に行ったらお姉さんから離れないこと、単独行動はなるべく避けて、笑顔を振り撒かないこと。それから──」

「はいはい! 大丈夫! 新さんにしか笑いませんから!」

「──っ、行ってくる。なるべく早く帰る」

「頑張っておいしい晩御飯作りますからね~」

 私の旦那様は、私が大好きなちょっと独占欲の強い旦那様でした。浮気者だなんて疑ってごめんなさい。でもその執着でさえも愛おしいと思ってしまう私もたいがいだ。

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