君が好きでたまらない!
 夏の日差しが一段と厳しくなった翌週、私は姉に会いに事務所に来ていた。私としては、まさか新さんが最初から気付いていたなんて、彼から説明された後も驚きを隠せないでいたのだが、姉は全て知っていたかのような態度で拍子抜けした。

「丸く収まった?」

「お姉ちゃん、もしかして……気付いていたの?」

「新さんがコーヒーの時から気付いたのは想定外だったのよ。あんた以外の女子には塩対応過ぎるから、それを体感すれば愛されてるって自信持てるかなって」

 なるほど、姉はコーヒーをこぼせ大作戦の時に、変装された私が新さんに冷たくあしらわれるのを狙っていたのか。ところが、新さんが私だと気付いて靴を拭いてくれたり、飲み会でべったりくっついたり、二人でお出かけに誘ったりと、突然のアタックを始めたのでどうしたものかと思っていたとのこと。

「あんたたちのお見合いは、新さんが仕組んだって知ってたし、うちの両親に懇願する姿も見たしね。それにあんた、GPSつけられてるでしょ」

「知ってたの!?」

 私は全然知らなかったのに! なんで?

「だってあんたと出かけてると、遠くから見てるもん。そして解散しようかなって思ったら必ず迎えにくるでしょう。すぐに」

 うそぉ。全然気づかなかった。遠くから見ている!? 確かに、姉や友人と出かけた後は、必ず迎えに来てくれる。仕事が忙しくても、そういえば自力で帰宅したことはない気がしてきた……。
 私はずっと愛されて大事にされてきたのに、勝手に寂しくなって浮気を疑ってしまったのか……。

「お、教えてほしかったよ……」

「言ってもまたウジウジしちゃうでしょ! だったら行動あるのみ! と思ったわけよ!」

 確かに説明されても、GPSに気付いたとしても、新さんから直接話を聞かなければ信じられなかったかもしれない。

「そうだね……お姉ちゃんありがとう」

「ちゃんと幸せになりな」

「うん!」

 ちなみに飲み会の時、父がうっかり「今日の佳織も可愛いなぁ」とつぶやいたのでみんな気づいたそうだ。父にまでばれていたとは。

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