クールな准教授は密かに彼女を溺愛する
紗奈はスマホで地図を見ながら歩く。
この時間帯はもう学生は少なくサラリーマン風の人が多い。

要が5メートル程離れた場所から着いてきているからか、1人で歩いていても不思議と怖さは感じない。

広い道を抜けて路地に入ると飲み屋が数軒立ち並ぶ。
こんな場所があるんだ、と普段駅からまっすぐの道しか知らなかった紗奈は好奇心からキョロキョロ周辺を見渡す。

「こんばんは〜。君、女子大生?」
突然、若いサラリーマンが2人、声をかけてきた。
「かわいいね〜。
何歳?今から飲みに行くんだけど一緒にどう?」

紗奈はなんだか分からなくて瞬きを繰り返す。
腕を掴まれそうになり、

「きゃっ。」
不意に背後から抱きしめられ、びっくりして振り返る。
メガネを外した要が怖い顔で2人の男を睨んでいた。

「彼女に触るなっ。」
低い声でそう言うと、男の腕を掴んで握りしめる。
「痛っ、イタタタ…。」

「ゴメンねー。彼氏いたの分からなくて…。」
もう1人の男が急いで謝り、ぺこぺこしながら痛がってる男を引っ張って逃げていく。

あっと言う間の出来事に紗奈は反応すら出来ず、要に抱きしめられたままで固まっているだけだった。

「はぁーー。
なんでそんな無防備なんだよ。」
スマホを取り上げられ、くるっと体の向きを返させられる。

「道反対だから。地図、位置方向が反対。」
要が不貞腐れた感じで不機嫌に言う。

紗奈はハッとして謝る。
「ご、ごめんなさい。」

「明日から有無を言わさず一緒に帰るから。」
手をぎゅっと握られ、紗奈は恥ずかしくなって俯く。

メガネを外した要はやっぱり目立つ様で、急に周りが騒がしくなる。

「せ、先生…。やっぱりメガネはつけた方が…。後、目立つので手は離してください。」
小さな声で呟く。

くるっと要は振り返り、
「1人でちゃんと歩けるようになるまで手は離しません。」
ギロっと睨まれ、紗奈はビックっとする。

「先生…。怒ってます?」
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