クールな准教授は密かに彼女を溺愛する

カレーが完成して一人分をダイニングテーブルに運ぶ。

「お待たせしました。お口に合えばいいんですけど…。」

「ありがとう、美味しそう早速いただきます。」
翔は本当に嬉しそうな顔をして、手を合わせカレーを頬張る。
それでもさすが御曹司だけあって所作が綺麗だなぁと紗奈は思いながら微笑む。

「上手い!凄いね、どっかで習ったの?」

「い、いえ。普通のカレーです。
両親が共稼ぎだったのでお料理は小さい時からお手伝いしていて、何となくでしか作れません。」

翔がオーバーな程に喜ぶのでびっくりして紗奈は控えめに答える。要さんもいつも大袈裟なくらい褒めてくれるけど、そう言う所が兄弟なんだなぁと思って嬉しくなる。

「可愛いね。紗奈ちゃん、笑顔がいい。」
突然言われて、思わず顔が赤くなって目が泳いでしまう。

「ははっ。うちの家庭は小さい頃から母親は一切家事をやらない人だったし、奥さんもまったく料理とかしないから、専属のシェフが居るくらいだ。
だから、こう言う手料理に飢えてる。
素朴な味って言うか、こう言うのをお袋の味って言うんだろうな。」

「お袋の味…お口にあった様で良かったです…。」
年上のお兄さんからお袋の味と言われて複雑な気持ちになるが褒めてくれているのだと気を持ち直す。

「ホント君って、分かりやすく顔に出るね。見てて飽きない、要も幸せなんだろうな。 良かったよ、兄として体験出来て。」

翔はその後、カレーをお替わりまでして
『いけない要が帰ってきちゃうから帰るね。カレー食べた事は要には内緒にしといてね。怒られるから』とお茶目に人差し指を口に当てて、バタバタと帰って行ってしまった。

要さんが帰って来るのを待ってたんじゃなかったの?と、紗奈は疑問に思いながら要の為にカレーを温め直す。

書類について翔さんは『不要なら破り捨てていいからって言っておいて』と一言添えていたけれど、大事な書類だったんじゃないのかなぁ?
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