クールな御曹司の溺愛ペット【続編完結しました】
挨拶回りという重大ミッションを無事に終えた私は、純粋にパーティーを楽しむ時間をもらった。
前方にはステージが設けられ、余興のために呼ばれた大道芸人が先ほどから拍手喝采を受けている。
ホール中央には一流ホテル並みのおしゃれな軽食が並び、そこには塚本屋自慢のお茶を使ったスイーツもたくさん振る舞われていた。
ゼリーにわらびもち、抹茶ケーキにほうじ茶プリン。
どれも一口サイズにしてあるのでありがたい。
私はプレートいっぱいにスイーツをのせて、一人悦に入った。
「ん~、美味しい~」
さすが塚本屋、通販サイトで贈り物ランキング常に上位にいるだけのことはある。こんな美味しいもの、贈りたいし貰いたい。
あれやこれやこんなに贅沢に頬張っていいものなのだろうか。いやきっと、一成さんの婚約者役を務めた私へのご褒美なのだ。思い切り堪能しよう。
などと考えていると、突然「くっ」と押し殺したような笑いが隣から聞こえる。
「一成さん、どうかしましたか?」
「いや、千咲がコロコロ表情を変えながら食べているから、つい」
「あっ、すみません。変な顔していましたか?気をつけなくちゃ」
スイーツの美味しさに気を取られて顔が緩んでしまっていたかも。仮にもまだ婚約者役なのだから、一成さんに恥をかかせないようにしなくちゃ。
……と思うとちょっと欲張って盛り過ぎたかな?
「今度は何を考えているんだ?」
「えっ?」
「どれを食べようか迷っている、とか?」
「あ、いえ、ちょっと欲張りすぎたかなと思いまして。一成さんは食べないんですか?」
「そうだな、じゃあ、わらび餅を貰おうか」
急に右手を掴まれたかと思うと、そのまま持っていたフォークでわらび餅を掬う。一成さんは私の手を掴んだまま、わらび餅を口に入れた。
まるで私が一成さんに食べさせてあげたかのように。