クールな御曹司の溺愛ペット【続編完結しました】
「すごいよね、若くして副社長だなんて。 よっぽど優秀で期待されているのね」
感心するお姉ちゃんに、うんうんと激しく同意する。
本当に、そんな立派な人の秘書が私なんかでいいのだろうか。
社長の秘書は社員の時東さん。
他にも秘書をやっている人がいるけど、派遣社員なんて私だけのような気がする。
「副社長の秘書って、普通社員がやるものじゃない?」
「さあ、どうかしら?副社長がそれでいいならいいんじゃないの?だって、別に派遣社員が社員より劣っているわけじゃないでしょう?」
「……劣っている気がする」
「それは自分を下に見すぎよ。千咲は私の自慢の妹なんだから、もっと自信もって」
「お姉ちゃんってほんと優しい」
「千咲は私の大切な妹だもの。ちょっと遠く離れてしまうけれど、これからも仲良くしましょう」
ふんわりと微笑むお姉ちゃんは本当に綺麗。
私もお姉ちゃんみたいに綺麗だったら、ちょっとは一成さんに振り向いてもらえるだろうか。
……って、違う違う。
別に私は一成さんとどうこうなりたいわけじゃない。
時東さんからも、副社長に恋心を抱くなと言われているし。
ちょっと婚約者の真似事なんてしてしまったものだから、心が浮ついているのだ。
そう、それだけなのよ。
「千咲はいい人いないの?」
「うっ……い、いない」
そんなタイミングでお姉ちゃんが聞くものだから、思わず言葉に詰まってしまった。
「彼氏ができたら紹介してね」
「……できたらね」
はは、と、乾いた笑いしか出てこなかった。
一成さんにはフラれているし、それなのにときめいちゃう自分の心も落ち着けと思っている。
ご縁があって働かせてもらっているけれど、こんな状態じゃ自分の将来も不安だ。
いろいろなことに中途半端な私に彼氏ができるなんて夢のまた夢。
ていうか一成さんを意識しちゃってる時点で、新しい恋ができる気がしない。
そう、そうなのだ。
新しく恋をするというのがどういうことなのか、忘れてしまった気がする。