クールな御曹司の溺愛ペット【続編完結しました】
会場に戻るとイベントは閉場しており、各企業の関係者たちがせわしなく片付けをしているところだった。

塚本屋のブースに顔を出せば、皆がわっと集まる。

「片山さん、心配したよ!無事でよかった」

「ご心配をおかけして申し訳ありませんでした」

「でもまさか人助けしていたなんて思わなかったな」

「前から片山さんは気が利く人だって噂されていたけど、さすがだね」

「えっ?そんな噂が?」

「副社長の秘書なのにお高く留まらず働き者だってよく聞くよ」

そんな評価は初めて聞いた。
いつだって噂されるのは「ペットみたい」だとか「いつ辞めるんだろう」とか、そんな嘲りばかり。
いまだに過去の秘書たちはどんな様子だったのだろうと気になって仕方がない。

だけど私の知らないところでそんな前向きな評価もしてくれていたなんて。
妙にくすぐったく感じるのはなぜなのだろう。

「片山さん、これ」

「高田さん」

仏頂面の高田さんが手帳を差し出す。
パンフレットがパンパンに挟み込まれた私の手帳だ。
思い起こせばアレルギーの彼女を支える際に邪魔になるからと地面に置いた記憶。

「見直したわ」

「え?」

「このレポート、あなたが書いたんでしょう?出入口に落ちてた」

まさか高田さんが拾っておいてくれるなんて。
私はパラパラと手帳を捲る。
今日まわったブースの感想をびっしり書き込んでいる、紛れもなく私の手帳。

「塚本屋のこと真剣に考えているのね」

「え、ええ、それはもちろん」

ふんっとそっぽを向く高田さん。
その態度が何だか今まで知っている高田そんと違う気がして私は小さく首をかしげた。

そんな様子を見て、同じ開発部の社員さんが耐えきれないといった感じで笑い出す。
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