恋がはじまる日

「俺に?」


「うん!毎年あげてるでしょ?渡しそびれるところだったよ。今年もホワイトデー期待してるね~、なんて」


「おう、任せろ!サンキュー、美音」


「うん!」


 誤魔化すつもりではなかったのだけど、自分の気持ちを上手く話せる自信がなかった。ひとまずはチョコのおかげで、少し場をつなぐことができた。


「早速食べていい?」


と言いながらも早々にリボンをほどき、包みを開ける椿。


「うん!どうぞどうぞ」


 言うが早いかあっという間にチョコブラウニーを頬張り、美味しそうに頬をほころばせた。


「うん!うまい!美音ってお菓子作り上手だよなぁ、普通に料理もうまいけど!」


 あまりに絶賛してくれる椿にちょっと恥ずかしくなる。


「ありがと。自信があるってほどでもないんだけど、作るのは好きかな」


 そんな他愛もない話をして過ごすも、藤宮くんは一向に戻ってこない。


 そういえば椿は、好きな女の子からチョコ貰えたのかなぁ、なんて直接は聞けないけど。


 そんなことを思ったところで、椿が自分の席に寄りかかりながら、私をじっと見た。


「椿?」


 その表情があまりに真剣だったので、私は息をのんだ。


「この前さ、美音に伝えたいことがある、って言ったの覚えてる?」


「うん、文化祭の時だよね」


 もちろん覚えている。その前から、椿は私に何かを打ち明けようとしていた。


「この前は藤宮に邪魔されて言えなかったけど、…今伝える」


「うん」


 椿は一つ大きく深呼吸をして、口を開いた。


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