恋がはじまる日

 まさか本当に待っててくれたの?

 私達は二人揃って顔を赤く染めた。


 ああ、やっぱり両想いなんだ…うわああなんだろうこのドキドキと恥ずかしさは!ていうかもしかして藤宮くんも少し浮かれていたりする?そんなことない?

 嬉しさと尋常じゃない照れで、私はうまく喋れなくなってしまった。

 うう、何話したらいいんだろう。世のカップルはどんな会話をしているのだろうか。彼氏彼女って言っても普通でいいんだよね?普通で!


 そこでふと思いあたる。


 あれ?彼氏彼女?私達って、付き合ってる、んだよね?お互い気持ちは伝え合ったけれど、付き合うとか付き合わないとか、そういう話ってしてない、かも…?


 一際冷たい風が二人の間を通り過ぎる。私は思わず身震いした。


 待って、私達、付き合ってはない?どう聞いたらいいんだろう?「私達って付き合ってるんだよね?」って聞いて、「は?付き合うとかは別だろ」とか言われたらどうしよう!いや藤宮くんがそんなこと言う訳ないか!でもでももし付き合わないって言われたら?あーー昨日のうちにちゃんと聞いておけばよかったぁー!


 私が悶々と脳内会議をしているのを、藤宮くんはどう思ったのか、私の顔を覗き込んで聞いてくる。


「寒いか?」

「え?あ、ちょっと」


 徐に手を取られ、そのまま優しく握られた。藤宮くんの手はとても暖かかった。


「あ、ありがとう…」


 繋がれた手から、また幸せが溢れていく。何も考えられなくなってしまう。

 私達は手を繋いで学校までの道のりを歩いた。


< 154 / 165 >

この作品をシェア

pagetop