恋がはじまる日

「悪かった」

「え?」

「彼女が、他の男と一緒にいたら、誰だって嫌だろ」


 そう話す藤宮くんを私はぽかんと口を開けて見つめてしまった。


 それってどういう意味?もしかして、私が山下くんと一緒にいたから?怒ってたんじゃなくて、拗ねてただけ?


 今日も私の体温と心臓は忙しい。寒さなんて感じないくらい身体が熱いし、心臓はドキドキ高鳴ってうるさい。


 彼女って、はっきり言ってくれた…!藤宮くん、私のこと彼女だと思ってくれてるんだ。

 そういえばさっき廊下でも山下くんに彼女だって、言ってくれてた気がする…!びっくりしすぎてそれどころではなかったけれど。


「うん、ごめんね。あの、藤宮くんの彼女である自覚を持ちます!」


 口にしていて、嬉しさから表情が緩みまくってしまった気がするけど、藤宮くんの彼女、という言葉に、私はまた幸せを噛みしめた。


「そうしてくれると助かる」

「うん!」

「家まで送る」

「ありがとう!」


 藤宮くんは照れくさそうにしていたけれど、私が思いきって手を握ると優しく握り返してくれた。

 こうして私達は、彼氏彼女の第一歩を踏み出し始めたのであった。





「そもそもノートくらい一人で運べるだろ、男なんだから」
「そうかもだけど、私も落としちゃったことあったし…」
「それはただ単に佐藤がドジだからだろ」
「うっ」
「男になにか頼まれたら、俺に言って」
「うん…」

 代わりに手伝ってくれるのかな?それはそれで申し訳ない気も…。そもそも藤宮くんに手伝って、って声掛けられる人なんているのかな?椿は気にせず声を掛けると思うけど。

「佐藤、またなんか失礼なこと考えてるだろ」
「え!いや、考えてないよ!?」


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