恋がはじまる日

 途中コンビニに立ち寄り、勉強のお供としてお菓子をいくつか買った。


「このお菓子懐かしい!中学生の頃、よく食べてたよね!あと椿ママが作ってくれるクッキーも大好きだったなぁ」


 当時に思いを馳せながら、そんな話をしていると、


「私、食べてばかりだったな」

と気付いてしまい苦笑する。椿も一緒になって笑う。


「確かに!頭働かすには糖分必要~とか言って、めっちゃお菓子食べてたよな」

 そう二人で笑い合いながらうちのお隣である、椿宅に到着した。


「お邪魔しまーす」


 声を掛けながら玄関に入るが、どこからも返事はなく物音ひとつしなかった。静かで少し冷たい空気を感じた。


「?」


 私が不思議に思っていると、椿が靴を脱ぎながら言う。


「ああ、今日みんないないんだ、帰ってくるの遅くなると思う」

「あ、そうなんだ」


 椿ママは夕方にはお家にいるイメージがあったので、静かな三浦家はとても新鮮だった。


「先俺の部屋行ってて。適当に飲むもん持ってくから」

「うん、ありがとう」


 椿がリビングに入っていくのを見送って、私は二階にある椿の部屋へと向かった。
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