恋がはじまる日
 やばっ!気付かれた!


「慌てすぎだろ」

「お前がややこしいこと言うからだろ!ど、どっか隠れねーと!」


 藤宮は呆れたようにため息をついた。


「今更無理だ。だいたい踊り場に隠れる場所なんてあるわけないだろ」

 そうこうしている間に屋上の扉は開かれ、美音が顔を出した。


「椿?何してるの?藤宮くんも!」

 美音は不思議そうに俺と藤宮の顔を交互に見ている。
 必死に言い訳を探してみるが、うまい言葉は見つからない。


「え、えっと、」


 藤宮にヘルプを求めるように視線を投げる。俺よりはうまく言い訳してくれるだろう。

 なんて、儚い期待だった。藤宮は口を開くと、


「こいつは、お前と先輩の会話が気に、」

「わーーーーーー!」

 フォローどころか裏切り!!つーか、覗きにきたのはお前もだろ!

「え?」


 キーンコーンカーン……。

 美音が不思議そうに首を傾げると同時に、タイミングよく昼休み終了を告げるチャイムが鳴った。
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