恋がはじまる日
「あ、次移動教室だから急がなくちゃ。先輩、部長、お先に失礼します。
 椿、藤宮くん、教室戻ろっ」

 美音はそういうと足早に階段を降りて行く。俺達もその後に続いた。

 振り返りよく見ると、そこには先輩だけではなく、隣のクラスの男子生徒もいた。こいつがサッカー部の新部長なのだろう。

 なんだ、先輩と二人きりじゃなかったのか。よかった…。


 美音の横に並びながら、彼女の様子を窺う。

 三人だったし部活の話だったっぽいなぁ、藤宮が変なこと言うからすげー焦ったけど。

 そそくさと前を歩く男の背中を睨みつける。警戒すべきはやっぱりこの男なのではないかと思った。
なんにせよ、関係ない。

 俺はこの気持ちを伝える。伝えないまま終われない。

 俺は改めて決意を固めたのだった。


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