恋がはじまる日

 プログラムもつつがなく進行し、現在は三年生のリレーが行われている。

 菅原先輩やサッカー部の先輩達とは残念ながら組が分かれてしまったけれど、心の中でこっそりと応援した。

 椿の頑張りもあってか、クラス順位はトップ、白組も紅組と接戦の状態であった。このまま順調に行けば優勝もあるかも。


『続いての競技は、借り物競争です。出場の生徒は、…』


 あれ?そういえば藤宮くんがいない?さっきまで面倒くさそうに応援席に座っていたと思ったんだけどな。

 彼が転入してきてもう半年。季節はすっかり秋だ。

 いつもどこに行っているんだろう?
 藤宮くんは急にいなくなるし、急にどこかから現れたりする。まさに神出鬼没だ。


 自販機でお茶を買い、とりあえず私も席について応援しようと、自分の応援席に戻る道すがら。急に右手首を掴まれた。


「わっ!」


 振り返るとそこには、若干息を切らした藤宮くんが立っていた。


「び、びっくりした!どうしたの?そんなに急いで」


 藤宮くんが息を切らしているところなんて、見たことがあっただろうか。あまりに急いでいるようで、こっちまで落ち着かなかった。
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