黒い龍は小さな華を溺愛する。
私ってばこれから開店だっていうのに、ぼーっとしてた!
だって……ハーフアップにまとめた髪にギャルソンエプロンをつけてるもんだからつい見とれてしまったんだもん。
どっかのオシャレなカフェの店員さんのようにも見える。
「あの外見だから見とれるのもわかるけどねぇ」
そう言って豪快に笑ったので、常盤くんに聞こえないくらいの小さな声で篠原さんに聞いてみた。
「常盤くんっていつからここに住み始めたんですか?」
「んー、確か夕晴が14.5くらいの時じゃなかったかなぁ、その辺で倒れてるのを拾ってきたのがきっかけでね」
「倒れてた!?」
「そう、喧嘩してすごい顔も体も傷だらけで。聞いたら数日ろくなもの食ってないって言うんだよ」
「え……常盤くんって、家は……」
こんなこと篠原さんに聞いて良いんだろうかと思ったけど、なかなか本人には聞けないし……。