黒い龍は小さな華を溺愛する。
不穏な視線
本屋の棚にずらりと並んだレシピ本を前に、私は腕を組んで唸っていた。
どれがいいんだろう。
何度も助けてもらってきた常盤くんに何か作ってあげたくて。
お礼、なんて言葉で済ませられるほど軽い気持ちじゃないから。
「……これとか?」
手に取ったのは、初心者向けっぽいレシピ本。
写真付きで、工程も少なくて私でもできそうに見えた。
母との暮らしではキッチンがあっても料理を教えてもらう、なんて今までなかったから何も作れない。
「……沙羅?」
その時、聞き覚えのある声に振り返ると、参考書を抱えた律くんが立っていた。
「律くん!?」
「ここで何してんの?」
「えっと……料理の本を……」
「料理?沙羅が?」
「うん……って律くんは参考書買いに来たの?」
「うん。そしたら腕組んで悩んでる変な人が目に入って」
ぷっと笑って私を見る。
「へ、変な人って失礼!あ、そうだ。お姉さんが勉強教えてあげようかー?」
冗談半分、ちょっと得意げに言ったその瞬間。