黒い龍は小さな華を溺愛する。

周りの視線が刺さる。

え……?

さっきまで気にも留めていなかったのに、急に空気が変わった気がして。

年上の女が中学生に声をかけてる、そんな風に見えてるかも。

一瞬言葉に詰まった私を見て……


「あははっ」


律くんが大きく笑った。

「沙羅っ顔赤い!」

「え、違っ……」

「ほんと沙羅って考えてることわかりやすい!」


年下の子に見透かされてて恥ずかしくなってしまう。


「これは夕晴も気が気じゃないよなぁ」


「え?」


「ううん。今日はうち来るの?」


「あ、うん!バイトだから行くよ」


「じゃ、いこ」


なんだか律くんは私より大人だ。

でも最初に会った頃の律くんより明るくなって、よく笑ってくれるようになった。

その変化に私も嬉しくなる。


お会計して本屋を出た時。


……また、だ。


背中に感じる視線。

誰かに見られているような、
でも振り返っても誰もいないような。


気のせい……なの?



――その時はまだ、あの視線が私たちの日常を壊す合図だなんて思いもしなかった。
< 192 / 249 >

この作品をシェア

pagetop