黒い龍は小さな華を溺愛する。
周りの視線が刺さる。
え……?
さっきまで気にも留めていなかったのに、急に空気が変わった気がして。
年上の女が中学生に声をかけてる、そんな風に見えてるかも。
一瞬言葉に詰まった私を見て……
「あははっ」
律くんが大きく笑った。
「沙羅っ顔赤い!」
「え、違っ……」
「ほんと沙羅って考えてることわかりやすい!」
年下の子に見透かされてて恥ずかしくなってしまう。
「これは夕晴も気が気じゃないよなぁ」
「え?」
「ううん。今日はうち来るの?」
「あ、うん!バイトだから行くよ」
「じゃ、いこ」
なんだか律くんは私より大人だ。
でも最初に会った頃の律くんより明るくなって、よく笑ってくれるようになった。
その変化に私も嬉しくなる。
お会計して本屋を出た時。
……また、だ。
背中に感じる視線。
誰かに見られているような、
でも振り返っても誰もいないような。
気のせい……なの?
――その時はまだ、あの視線が私たちの日常を壊す合図だなんて思いもしなかった。