私の想いが開花するとき。
とにかく忙しくしていれば少しは頭の中から宏太が消えてくれ、必死で仕事を進めては他の人の手伝いも積極的に引き受けた。カチャカチャとキーボードを叩き、仕事に没頭していると「里穂」と大好きな声で呼ばれて、また心臓が跳ね上がる。恐る恐る後ろを振り返るとやはり宏太が立っていた。
「ど、どうしたの?」
「里穂、今日暇? 同期の皆が俺のお帰り会するって張り切ってるんだけど、里穂も来れるか?」
「あ〜、ごめん! 今日は早く帰らなきゃいけなくて、ごめんね」
ごめんっと両手を合わせ、里穂は笑って見せた。
本当は早く帰らなきゃなんて、そんなことはない。今日だってきっと健治は早くに帰ってくることはないだろう。だけど、少しでも近い距離に、長い時間一緒に宏太と過ごしたらきっと宏太の手をもう振りほどけ無い。それくらい宏太を男として更に意識してしまっているのだ。
「そっか、今日は旦那が早く帰ってくるんだな。良かったじゃん! じゃあ里穂はまた今度な」
「うん、また誘って」
宏太は里穂の頭をぽんっと軽く叩いて「はいよ〜」とひらひら手を振りながら帰っていった。
宏太に触れられた頭はまだ熱をしっかりと持っていて脳がくらくらする。