私の想いが開花するとき。
時刻を確認するとまだ夕方の六時半だ。健治とのデートで行ったことのあるバーにでも寄ってみようかと考えて里穂は一人で会社を出た。
健治との数少ない思い出の場所。一度だけデートで行ったことのあるバーが会社から三駅ほどは離れたところにある。一人電車の人混みに紛れて思いでのバーに向かった。
(懐かしいな……)
薄暗い夜になりかけの道に小さく光る看板が見えててきた。まだお見合いしてすぐの頃に健治に連れてきてもらったバーはとてもオシャレで普段おじさんたちが賑わうような居酒屋しかいかない里穂にはとても新鮮で輝いて見えたことは今でも覚えている。
カランカランと扉が開くたびにどこか懐かしい鐘の音が鳴るのがこの店の良いところだ。外にいても小さく聞こえてくる扉が開く音に目線を向けると男の二人組が仲睦まじく腕を組んで出てきたところだった。
(時代だな〜。同性カップルなのかな?)
あぁ、そう言えば自分も昔はああやって健治とあの扉を出てきたっけ。
懐かしいなぁなんて思った矢先だ。腕を組んでいる男の顔が看板の小さな明かりに照らされてはっきりと見えた。