私の想いが開花するとき。
「里穂、幸せになれ。僕は里穂を恋として好きにはなれなかったけど、人としては好きだったよ。ずっと騙しててゴメンな」
里穂の瞳から溢れ出すように涙が流れ落ちる。最後の最後にこの人のために流せ温かな涙がこんなにもあったなんて。
「拭きな」
健治が手渡してくれたタオルでぐしゃぐしゃになった顔を拭きながら、しばらく泣きはらした。健治は里穂に振れること無く、ソファーの隣に座ることもなく、ただただ、泣いている里穂をキッチンからさりげなく見ている。
何分間泣いていたかは分からないけれど、この場にずっといることも辛くて、申し訳なくて、いろんな気持ちが入り混じり、居た堪れなくなった。
「あ、あの、荷物は後で取りに来ます」
「あ、ああ。分かった」
まさか自分が不倫漫画とかでよくある言葉を使うとは思ってもいなかった。タオルを握りしめたまま立ち上り、健治の顔を見ること無く玄関に進む。健治が後を追いかけてくる様子もなく、里穂は躊躇なく玄関を出た。