いつか、君が思い出す季節
◯
「これをもちまして、第六十四回西辰高校卒業式を閉式いたします」
厳かな定型文にも感慨深さが滲み、目の縁がじんわり熱を持つ。
入学式も、ちょうどここで執り行われたのだと記憶を辿ると、誇らしさと寂しさが入り混じって、なんとも言えない温かさが心に広がった。
思い出が詰まった体育館に後ろ髪を引かれながら、拍手の花道を抜ける。
外に出ると、私は同じ制服の中から、何度も隣を歩き見慣れた姿を探した。
瀬川が帰ってしまわないように、最後のHRの前に、話があると伝えておきたかった。
校門のすぐ傍では、色とりどりの花を手にした下級生たちが、部活ごとに固まって先輩がやってくるのを待っている。
三年間帰宅部だった私は、その中の誰からも餞を貰うことはない。
多分、瀬川も。
私はそこから視線を移して、教室へと戻る同級生の波に、矯めつ眇めつ目を凝らす。
でも、いくら探しても瀬川の姿は見つからなかった。
私は瀬川の連絡先を知らない。
お互いに、知らなくてもグダグダした関係を続けていけると思っていたから。
こんな時になって、目に見える繋がりが欲しいと願っても、神様は我儘を聞き入れてはくれないのだろう。
諦めて教室に戻ろうとした時、ふと見覚えのある男子生徒が視界を横切った。
瀬川とよくつるんでいた生徒だった。
私は慌てて駆け寄り、彼の袖を引く。
「あの、瀬川、知らない?」
そう尋ねると、彼は若干の気まずさを顔に貼り付けて、視線を逸らした。
「いや……」
口篭る彼を、私は訝しげに見上げる。
彼は視線を彷徨わせ、頭を掻き、うーんと唸ると、観念したように口を開いた。
「これをもちまして、第六十四回西辰高校卒業式を閉式いたします」
厳かな定型文にも感慨深さが滲み、目の縁がじんわり熱を持つ。
入学式も、ちょうどここで執り行われたのだと記憶を辿ると、誇らしさと寂しさが入り混じって、なんとも言えない温かさが心に広がった。
思い出が詰まった体育館に後ろ髪を引かれながら、拍手の花道を抜ける。
外に出ると、私は同じ制服の中から、何度も隣を歩き見慣れた姿を探した。
瀬川が帰ってしまわないように、最後のHRの前に、話があると伝えておきたかった。
校門のすぐ傍では、色とりどりの花を手にした下級生たちが、部活ごとに固まって先輩がやってくるのを待っている。
三年間帰宅部だった私は、その中の誰からも餞を貰うことはない。
多分、瀬川も。
私はそこから視線を移して、教室へと戻る同級生の波に、矯めつ眇めつ目を凝らす。
でも、いくら探しても瀬川の姿は見つからなかった。
私は瀬川の連絡先を知らない。
お互いに、知らなくてもグダグダした関係を続けていけると思っていたから。
こんな時になって、目に見える繋がりが欲しいと願っても、神様は我儘を聞き入れてはくれないのだろう。
諦めて教室に戻ろうとした時、ふと見覚えのある男子生徒が視界を横切った。
瀬川とよくつるんでいた生徒だった。
私は慌てて駆け寄り、彼の袖を引く。
「あの、瀬川、知らない?」
そう尋ねると、彼は若干の気まずさを顔に貼り付けて、視線を逸らした。
「いや……」
口篭る彼を、私は訝しげに見上げる。
彼は視線を彷徨わせ、頭を掻き、うーんと唸ると、観念したように口を開いた。