涙ノ結晶


「・・小牧」


『なに?』


「お前も、充分辛かったんじゃねーか」

 
『・・う、ん』


聖は、唯との話がまるで自分の事だったように
真剣に聞いてくれた。
そして、私の辛さも分かってくれた。


『ありがとう』


そう携帯に打ち込んだ瞬間に、涙が溢れた。
頬を伝う涙は、外の冷気とは正反対にとても熱かった。


「声、さ」


『え?』


「声、出るようになったら」


『うん』


「いっぱい、俺の名前呼べよ?」


『うん』


2回目の「うん」は、なかなか打ち込めなかった。
涙で文字盤が見えなくて。

 
聖が言ってくれた

“俺の名前を呼んで”

その言葉は、私が今、一番欲しい言葉だった。


『聖』


「おー」


『聖』


「うん」


『聖』


「、はやくお前の声で聞きてぇな」


頭をぽん、と叩いて涙でぐじゅぐじゅになった私を見てくれた聖は、

やっぱり、私の運命の人なんだと思う。

だって、こんなに胸がきゅんてなる人初めてだもん。

心が、幸せで満たされていく。





しかし、幸せな日々程長くは続かなかった。

その3日後、私たちに波乱は訪れる。






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