総長様は可愛い姫を死ぬほど甘く溺愛したい。
最初は不純な動機で桜十葉のことをほしいと思った。この子なら、俺に幸せをくれるかもしれないと思い、心の底から欲した。
だけど今は、桜十葉を幸せにしたい。桜十葉が幸せそうに笑ってくれていたら、俺も十分すぎるくらい幸せだから。
「行こうか、桜十葉」
裕希の家に。そして、俺たちの行き着く先はきっと、光で満ち溢れている。俺は、坂口組の組長の座を継ぐ。
そう、決めているんだ。兄貴の重荷を減らしたい。これまでの憎しみは、そんな思いに変わった。それは多分、桜十葉が俺の隣に居てくれるおかげだ。
俺は、坂口組の若頭、坂口裕翔だ────。
俺が組長になったら、このヤクザを地の底から変えてやる。人を傷つけない、正義の志を持つ者たちの集団にしていく。
これは、桜十葉と居るための絶対条件だ。
もう自分を傷つけることなんてしないよ。傷つくことに、慣れたりなんかしないよ。だって、君が大切に思ってくれている俺なんだから。
桜十葉の小さくて色白の手を握って、俺は兄貴の家までの道を歩き出した。
きっと俺は、桜十葉が居ればどこまでだって頑張れる。