総長様は可愛い姫を死ぬほど甘く溺愛したい。
こんな感じで恋というものは終わるのか、となんだか泣きたい気持ちになったが我慢した。
そうしないと私は“かわいそうな”女の子になってしまう。それだけは嫌だった。
……だけど。
この胸を覆う大事な人を失ってしまった喪失感だけは、計り知れないほどに重く、私の心にのしかかっていた。
その日は雨が降っていた。その空模様は私の今の心を表しているようだった。
私はなんだか家に帰る気分になれなくて、公園にずっと佇んでいた。
好きな人に振られた“かわいそうな”女の子も、誰もいない公園で打ちひしがれていたいのだ。
今はもう太陽も沈み、黄昏色だった夕方の空が、段々と夜の闇に呑まれそうになっている。
「わっ」
突然強い強風が吹いて、条件反射でスカートに手を持っていってしまったせいか持っていた傘が飛ばされてしまった。
本当に今日は、私にとって人生最悪な日だ。冬の風は、肌を刺すように冷たくて、手がかじかんですごく痛い。
私は力が抜けたようにペタンとベンチに座り込んだ。傘も差さずにこんな所に一人でいる女子高生を誰が慰めてくれるのだろう。
一人、そんな感傷に浸っていると突然目の前が暗くなった。
「こんな所に一人でいたら悪い男に連れてかれるよ?」
妖艶さを含んだその声に肩が震えた。恐る恐るその声の主を見上げると、思わず釘付けになる。
「何、俺の顔に興味ある?」