Evil Revenger 復讐の女魔導士 ─兄妹はすれ違い、憎み合い、やがて殺し合う─
 不思議に思ったが、そもそも兄の考えていることなど、前からわからない。
 それよりも、逆らえばまた兄に殴られるかも、という恐怖が、黙って私を従わせた。
 歩いていくガイの後ろを、黙って付いていった。
 歩幅が違うせいか、ゆっくり歩くと置いて行かれそうになる。
 兄の怒りを買いたくないがため、私は速足で追いかけた。
 そういえば彼は、砦のやり取りでも兄に賛同していた数少ない人物であったことを思い出す。

「この臆病者共め! 国王陛下への恩義があるなら、今すぐベスフル城奪還のために兵を挙げるべきであろう!」

 そうやって、他の小隊長たちを怒鳴りつけたのを覚えている。
 この短い間に、使い走りを頼むほど仲が良くなったのだろうか?
 彼に限らず、城の兵たちの間では、兄を称賛、支持する声が飛び交うようになっていた。
 戦場などにまるで縁のなかった私には、兄の成しえたことの凄さは、いまいち実感できていない。
 そんなことを考えながら歩いといると、気が付けば城の外へ出ていた。
 こんな場所で兄が待っているのだろうか?
 私がきょとんとしていると、次の瞬間、私は口を塞がれ、喉元に短剣を押し付けられていた。

「!?」

 私には、一瞬、何が起きたのかわからなかった。

「声を出すな」

 ガイの声。いつの間にか背中に回り込まれて、動きを封じられている。

「怪我をしたくなかったら、おとなしくしろ」

 恐怖で体が動かなかった。
 私は布で口を塞がれ、縄で後ろ手をきつく縛られた。
 小柄な私は、ガイの片手で軽々と担がれて、どこかに運び去られようとしていた。
 何故? この人は兄さんの賛同者ではなかったのか? 私をどこに連れて行くつもりなのか? まさか、兄さんの命令で?
 私の思考は混乱するばかりだった。
 冷静に考えれば、この時、兄が私をどうこうする理由はない。実際のところは、私のことなど、もう歯牙にもかけていなかったであろう。
 城の裏口には、なぜか見張りがいなかった。
 彼が見張りを、何らかの手段で予め排除していたのだろう。
 裏口を出てしばらく歩いたところに、馬が止めてあった。
 こんなもので、いったいどこまで行くつもりなのか、目的がわからなかった。

「待て! あんた、チェントをどうする気だ!」

 声の先にスキルドがいた。
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