星降る夜の奇跡をあなたと

やぎ座流星群

こっちに来たときは、冬だったのに、
気が付けばもう夏が近付いていた。
この生活に慣れすぎて、自分はもう
この世界の人なのではと思う事がある。
というか、思い込みたいのだ。
慣れすぎてというのは建前で、実際は
蓮との生活を手放したくないというのが
本音だということも私自身、
分かっていた。だから、6月に
“うしかい座流星群”があったものの、
突発的出現がない限り、
ほぼ見られないという理由で
断念した事に、まだ蓮と一緒に
居られると心の中で喜んだ。
次の流星群は7月終わり。
それまでは確実に一緒に居られると
信じて、そして願わくば、蓮も
私と同じ気持ちでありますように…


蓮が夏休みに入った。
だからといって遊べる訳ではなく、
夏休み明けに大きなテストがあるから、
勉強は欠かせない。“今回は
勉強に専念したいから実家には
帰らないから安心して”と蓮が言って
きた。勉強が理由だと言っているのに、
私が居るからというのも
少なからずあるのでは?
と思ってしまう自分に感情は複雑だ。
帰省にしても、図書館にしても明らかに、
蓮の行動を制限させている。かと思えば、
蓮と過ごす事に幸せを感じているのだ。
あぁー、自分が嫌だ。
そんなことを考えてる内に、
あっという間に“やぎ座流星群”の日と
なった。
7月は“みずがめ座δ流星群”と
“やぎ座流星群”が見られるらしいが、
今回は観測条件が良好だと言われている
“やぎ座流星群”に絞ったのだ。
時期だから仕様がないものの、
お馴染みのマフラーを着けて
もらえないのはちょっぴり
心もとない気がした。
One Treeへ行くのも4月以来。
あの時は何も起こらなかったが、
今回はどうだろうか。
戻れてしまうのだろか。

「緊張してる?」

「ちょっとね」

「そうだよね。でも大丈夫だよ。
 ちゃんと傍にいるから」

「ありがとう」

蓮、私は今だけじゃなくて、
ずっと傍にいて欲しいんだよ…
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