星降る夜の奇跡をあなたと

再会

周りを見渡すも蓮の姿が見えない。
私は咄嗟に首元を掴んだ。
“ネックレスがない!”
スマホを取り出し、ロック画面を
確認する。電波がある!
すぐに今日の日付を調べる。
戻ってる…帰ってきて来たんだ…
蓮は!?
再度、辺りを見渡すもOne Treeが
立っているだけであった。
蓮は必ず迎えに来てくれると言った。
このまま待つか。それとも。
引越していなければ、家は分かる。
蓮は絶対に待っていてくれてる筈だ。
私は走り出した。
その時、

「和奏、和奏ー!」
蓮の声が聞こえる。
私は走る足を更に早めた。

「蓮!蓮、蓮!」

蓮の姿を見つけ、蓮の胸に飛び込んだ。
蓮は抱きとめてくれ、
首筋にキスを落とした。

「和奏だぁ。おかえり」

蓮がいる。ちゃんといる…
確かめる様に蓮の髪に頬に触れる

「ただいま。蓮、長い間待っててくれて
 ありがとう。待たせてごめんね。
 これからは絶対に離れない。
 ずっと傍に」

言い終わるのを待たずして蓮の唇が
私の唇に重なった。徐々に深くなる
その行為を時間が経つのを忘れる位、
夢中になった。

どのくらい経ったのだろう…

 「風邪引いたら大変だから。
 とりあえず帰ろう」

「えっ!?あっうん」

“もう帰るの!?”と内心思った私は
あからさまに残念な顔をした。らしい…

「大丈夫。
 今日は連れて帰るから覚悟してね。
 話したい事も沢山あるし、
 暖房もつけっぱなしにしてきたから
 温かいよ。
 和奏の着替えもちゃんとあるから」

顔から火が出るかと思った。

蓮と手を繋ぎ、見慣れた帰り道を歩く。
“そうだっ!”と急に蓮が声をあげ、
私の髪を横に流すと、
首に少しひんやりとした感触。
“あっ!”

「やっと渡せた。すぐに渡そうと
 思ってたのに会えたのが嬉し過ぎて。
 4年前に和奏が戻った時間に合わせて
 来たんだけど、少し時差が
 あったのかな。
 One Treeの方向に光が見えて焦った。
 でも間に合って良かった」

「目が覚めたときに、蓮の姿が
 見えなくて、家に向かおうと
 思ってたよ。絶対待っててくれるって
 信じてたから。
 ネックレス…持ってこれなくて
 ごめんね。でもまたつけることが
 出来てすっごい嬉しい」
 
蓮の部屋は、私が知っている部屋だった。
何でも、絶対に変えない。変えるなら私と
一緒と決めていたそうだ。
リビングに着くと、蓮は足の間に
私を座らせ、後ろから抱き締め
この4年間の事を話してくれた。

冷蔵庫を開けた時は吃驚した事
“kanade”は私の名前から取った事
コメントで私を見つけた事
入学式に会いに行った事
入学後も時間を見つけては、看護科棟に
来ていた事
合コンで会った時は抑えるのに
必死だった事
色々動きたかったけど、未来が変わるかも
しれない恐怖で何も出来なかった事

まるで私の存在を確かめるかの様に
会話のあいだあいだに
頭や顔を撫で、
手を握り、
首筋に顔を埋め、
髪の毛を指先に絡ませていた。

そして…
蓮は4年の歳月を埋めるかの様に、 
私を求めた。
“今日は覚悟して”
有言実行とはこのことを言うのだろ。
その日私は寝かせてはもらえなかった。
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