星降る夜の奇跡をあなたと

ふたご座流星群


12月のある日、TVで
“今年もふたご座流星群が観測
出来る時期になりました。
ピークは12月14日。今年は
月齢条件も良く、眼視観測出来る
でしょう”というニュースを見た。
今年もきっとkanadeの新曲が
アップされるはず。
2週間毎に実習もあり、課題に
追われる日々。私は先週、今月の実習を
終えたが、またすぐに実習だ。
それが2月まで続く。
せっかくだからこの流星群を見ながら
kanadeの曲を聞いて癒やされたいという
衝動に駆られた。14日は金曜日。
次の日、学校もないから遅くまで
過ごしても問題無いだろうと
決行を決意した。 

迎えた当日、防寒は完璧。 
小さいショルダーバックに財布とスマホ、
リュックには、シートに水筒、
モバイルバッテリー、少しの食べ物
を持って自転車で向かう事にした。
真冬の外は寒い。寒過ぎる。
でも私の足取りは軽かった。
One Treeに着いて、早速シートを広げる。マイナーな場所なのか、他にもっと
良く観える場所があるのか
人は居なかった。
準備は万端!水筒に入れた
ホットコーヒーを飲みながらその時を
待つ。すると、すぅっと一筋の星が
流れた。途端に放射点から
空のあらゆる方向に星が流れ出した。
その光景は圧巻で、声を出すこと
も出来ず見ていると、これまで見てた
どの流星よりも大きく、
輝きを放っている星が流れた。
瞬間!あれだけ寒かったはずなのに
急に温かい空気と光に包まれた。
私はそのまま気が遠くなるのを感じ、
意識を失った…のだと思う…


「おいっ!おいっ!大丈夫か!?
 起きろよっ!おいっ!」

誰かが呼ぶ声が聞こえる…

「おいっ!こんな所で寝てたら
 風邪引くぞ!」

ゆっくりと目を開けると…
あれ?遠藤さん??
でもちょっと違和感…

「おいっ!大丈夫か!?」

「あれ?私…なんで?」

「何でって、何言ってるんだよ?
 ホントに大丈夫か!?」

「うん。ちょっとボーッとしてるけど
 多分大丈夫です。
 遠藤さん、ありがとうございます」

「はっ!?えっ!?何で名前??
 どっかで会ったっけ?」

はっ!?仮にもあなたがキスを
した相手ですが!?

「本気で言ってるんですか!?」

「本気も何も、俺、こっちに
 来てまだ1年も経ってないし、
 知り合いもそんなに多くないから
 忘れるはずはないと思うんだけど」

こっちに来て1年も経ってない?
あの時、6年って言ってたからもし
それが本当なら6年はこっちに
住んでいるはずだ。
いや、まさか1年生だった!?
でも友達も一緒だったし、
そんな嘘をつくだろうか?
それに最初に感じた違和感。
どことなく幼い感じに、髪型も
違う…どういうことだ?

「あの、あなたは、遠藤 蓮さん
 T大 医学科の6年生ですよね?」

「えっ!いや、遠藤 蓮だし、
 T大 医学科だけど1年」

なんで!?どうなってるの??
この人は遠藤 蓮さんで間違いない。
でも確かに私が会った遠藤 蓮さん
ではない。もしかして…
とりあえず、自分のスマホを確認するも
ロック画面だけでは私の確認したい事が
出ておらず、しかも圏外。
でも本当にこんな事が現実に起こるの
だろうか?

「18歳?」

「いや、誕生日きてるから19」

24歳ではないってこと?

「本当に申し訳ないのですが、
 スマホで今日の日付を出して
 貰ってもいいですか?出来れば
 西暦付きで」

「あんた、ホントに何なの?
 まぁ、いいけど」

ロック画面だと西暦が出てないらしく、
スマホをイジり検索してくれている様だ

「ほらっ」

5年前の日付だ…

「これ正確ですか?」

「本当に失礼なヤツだな。
 こんなんで嘘ついてどうするんだよ」

若干苛立っている様子が伺えるが
それどころではない。
私は項垂れた…
信じられないが、
所謂タイムスリップというものだろう。

< 5 / 37 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop