たぶんあなたの子です? 認知して下さい!
︎✴︎


今までの経緯をお互い話す。


✴︎


姉の宮前ゆりと妹の松永ゆきは双子だった。
しかし両親が小学生の時に離婚、それぞれ、別々に引き取られた。
姉は父親側で育った。
父親は害はないが無責任な人で、とうに再婚している。ゆりは苦労しながらも看護婦の資格を取り一人暮らしを始めていた。
一方、母親側の妹ゆきは、母子家庭で金銭的に苦労しながら奨学金で大学を卒業、やっと就職したばかりだったが、卒業を待たずに母親は病で急死してしまった。

そんな時妊娠した姉が、出産後の病院で階段から落ち、意識がしばらく戻らず、目覚めたら記憶が混濁していた。
今も入院中だ。

姉が怪我をする前に簡単に聞いていた妊娠の経緯は、恋人に妻がいたから別れたこと、子供を1人で産むということ、名前は父親の賢斗から一字もらって賢次にするという話だけ。姉の部屋で見つけた住所の走り書きを頼りに、妹が賢斗を訪ねてきた⋯⋯ 。


✴︎


3人と赤ん坊で車に乗って、ゆりの入院している病院に向かった。

秀斗の運転で走り出すと、


「昨日はどこへ行ってたの? 」


と秀斗が彼女に聞いた。


「姉の病院です」


賢斗が顔を上げ話を聞く。


「そろそろ退院するようにって。そんな話をしていたら、急に姉の記憶が戻ってきて、赤ちゃんはどこかと取り乱して、まぁ、それはよかったんですが⋯⋯  」

「入院費? 」

「⋯⋯ はい。出産費用もまだで、それから3ヶ月の入院や検査で、転倒ももちろん労災にならないし生命保険にも入ってなくて、今までの費用をとにかく払うようにって⋯⋯  」

「ふん、そんなことか。もう考えるな」


と秀斗は不機嫌に言った。
しばらく皆黙っていた。

それから賢斗がポツリポツリと話し始める。
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