眠りにつくまで






「来て良かった」

私の手を握り頭を撫でる聖さんがゆっくりと言う。もう私は何も言うことはなかった。今日は朝から受け止めきれないほど優しくしてもらって何も言うことはない。ありがとうも何度も聞いたって言われる。もう安心して目を閉じるだけでいいと思う。

「…ご飯…おいしかった」

喋っちゃった…

「食べてくれて良かった」

聖さんはいつもそういう優しい返事をするの。

「今度…私がつくる…ね」
「いつでも大歓迎。週末はショッピングだよ」

あの手の出せなかったカーディガンを思い出し笑えてくる。

「あれはあれで可愛いから…いつもあれ着る?」

聖さんも同じものを思い出してるんだね。

「手…温か…ぃ…」
「カイロ持ってた。冷たい手で光里に触れられないだろ?」

どうすれば夜中にそんな完璧な思考で行動できるんだ…温かい…手も、気持ちも温めてもらって…眠い…
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