眠りにつくまで
「寝た…」
たった15分ほどだ。体はとっくに眠いのに、頭と気持ちが落ち着かないから眠れなかったんだ。
外からこの部屋を見上げて、電気が点いたままだったのも暗く出来なかったのだろう。来て良かった。
光里が自分から助けを求めて、俺を求めて、俺に甘える…その日までこうして先回りしてやらないといけない。ただ恋人を失っただけでなく、事故という全く予想できないもので突然失った。しかも自分を迎えに向かっていた途中で…誰に何を言われなくても光里が自分を責める状況の中‘殺した’と面と向かって言われたのも今日だけではないはずだ。
時間とともに薄れる記憶はあるが、自分を責める気持ちは‘思い’‘想い’そして‘思い込み’なので薄れることはないだろう。だが、責める回数は減らせるはずだ。
光里が墓参りだけに生きてる時期は終わったんだ。今を楽しむことで光里らしく生きていける。
身動きしない光里の唇に軽く口づけ、この部屋の鍵を持つ。部屋を出て鍵をかけると、ドアポストへコトンと鍵を落とした。