眠りにつくまで







「聖さん」
「うん?」

おかわりしたご飯を頬張った顔を私に向けた彼に聞く。

「聖さんは、私の引っ越し先はここがいいと思うの?」
「思う。引っ越し先として申し分ないと思うよ?今の光里の生活圏を全く変えることなく職場へは近くなる」

そう言い、茶碗と箸を置いた彼は

「それより何より、俺が光里にここにいて欲しい。それだけだね…本当は。もし職場から遠くなるところでも、うちへおいでって言うに違いないから」

ふっと頬を緩める。

「私と聖さんが一緒に暮らすということを想像できるの?」
「簡単にできる。今この状況もまさにそれ。二人で食事しながらきちんと話す。最高だね。夜は光里だけじゃなく俺もよく眠れたし、今日はどこにも行かずに一緒にここにいた…幸せな休日だよ」

彼の言っていることはわかるんだ…全て私も体感したから。でも9年間の独り暮らしから踏み出すにはもう少し時間が欲しい。

「また…来ていい?」
「いつでも大歓迎」
「…金曜日の帰りに来ていい?」
「泊まってくれる?」
「…ゲストじゃなく、ここで暮らす…生活するという感触を得られたら引っ越してもいい?」
「もちろん。じゃあゲストじゃなく光里の家だと思って生活してみて。金曜日の帰りに来て月曜日はここから出勤する?」
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