眠りにつくまで





1月の連休に引っ越しと決め、徐々に荷物を聖さんの部屋へ運び出したが処分する物がほとんどだった。ここで9年間使い続けた物がほとんどだったから。

アパートが取り壊されるための引っ越しだということで、不動産管理会社は部屋が空になり次第解約手続きを完了させて1月分の家賃を日割りで返金して下さるらしい。ありがたくそのように手続きを済ませて、無事マンションの住人になったのだが、10日ほど後に管理会社から連絡があった。

「何だろう。二度も電話もらってたからかけ直してみるね」
「何だろうね。先にかけたら?食事はその後一緒に準備しよう」

私が仕事から帰って着替えたあとスマホとにらみ合っているところへ帰って来た聖さんが言う。彼のうがいを少し離れて聞きながら管理会社へ電話をかけると思いがけないことを言われた。

‘戸田さんの部屋だった部屋へ張り紙がされていて…繰り返されるので防犯カメラを設置したところ…’

何?張り紙?防犯カメラ?軽犯罪法違反?

「光里?」
「あ…ちょっとわからなかったので…もう一度お願いできま…」
「もしもし、お電話代わりました。もう一度お願いします」

私の様子を見た聖さんが私の手からスマホを抜き取り話を聞いてくれた。
< 226 / 325 >

この作品をシェア

pagetop