眠りにつくまで
ハンカチ…そうだったのか…やっぱり光里は俺に遠慮して樹くんの話をしなかったのだと思う。あのハンカチは俺の手元に1ヶ月もあった後に俺と光里を会わせてくれたんだ。導き以外に考えられない。
「ちょっと指輪大きいね」
光里の左手を取り薬指でくるっと指輪を回してみる。
「週末、お参りに行ってから、これ直しに出そう」
「うん、ありがとう。それまでに無くすと嫌だからケースに入れておくね」
「残念だけど仕方ないな。そのあと俺の実家へ一緒に行ってくれるか?」
「うん…大丈夫かな?」
「一緒に住んでるとは伝えてあるし、さっさと結婚しろと言われてるし何も問題ないよ」
「うん」
「それに、万が一結婚に反対されたからといって、それが結婚しない理由にはならない。もう決定したことだ…俺と光里の意思で結婚する」
寝起きのベッドでプロポーズされてすっぴんの可愛い光里が綺麗に微笑んだあと真顔になり
「遅刻しちゃう」
と俺の腕から抜け出そうとする。それを阻止して抱き抱えると
「ん、まずうがいだろ?一緒にしよう。一緒に一日を始めよう、光里」
洗面所でそっと彼女を下ろし並んで立った。