眠りにつくまで





判決まで1年ほどかかることの多い民事裁判。結論から言うと玲央が和解に応じた。

和解したらその日に裁判が終了するので短期間で終わらせられるのがまずメリットだ。玲央は1ヶ月で終わらせた。

和解で解決した場合でも‘その後に相手が約束を守らなくても強制執行ができないのでは?’と心配はいらない。裁判上で和解した場合の後に送られてくる和解調書にも、判決と同じ強制執行力が認められるからだ。例えば、相手が和解内容に従わなければ、給料や預貯金、不動産の差し押さえや強制退去が可能なのだ。

今回の和解は最初に出廷を無視した女に全面的に内容を認めさせることが出来たわけでメリットしかない。損害賠償請求はもちろん、あの部屋の住人を狙ったことを認めさせる内容を当初から入れていたので、榊原玲央と戸田光里に今後の一切の接触を禁止することが調書に書かれている。それが真の目的だったので満足だ。

和解前にすでにアパートの取り壊しが始まっており女が光里の引っ越し先を知ることもない。もしかするといつか墓地で会うことがあるかもしれないが今回の調書があることで素通りするはずだ。口先だけの謝罪もいらない。そんなもので中途半端に光里がひどい張り紙の内容を知るなんて御免だ。

光里が生涯知ることのない事実。知っているのは俺と玲央、そして北川法律事務所の担当者のみだ。
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