眠りにつくまで
和解より話は遡るが、2月は3日でなく週末に墓参りをし、ジュエリーショップで指輪のサイズ直しをお願いしてから俺の実家へ行く。
「チューリップを持って行きたい」
光里が言ったので、遠回りになるがあの花屋へ車を走らせる。
「遠回り、ごめんなさい」
「いいよ。せっかく2月にチューリップ買うならあの店だろ。3月になればうちの近くで花屋を探そうか?知ってる?」
「マンションからだと学校の敷地をぐるっと回る感じ、幼稚園側に1軒あるの。フラワーショップっていう感じのガラス張りのお店。ホテルとかにも入ってるチェーン店みたい。自分で買いに行ったことはないけど、学校の行事のお花のことで何度か行ってる」
「フラワーショップっていう感じな、わかるよ。今日の店は‘花屋’だ」
週末だからか先客が2人もいる店内は奥が少し暗くてフラワーショップのイメージではないと一人で納得する。
「何本がいいかな?」
「20本であのボリュームあるからな…15本か20本ぐらいか?」
「二色咲きだって…これ入れて20本にする」
「お待たせしました。あら…お兄さん、この前、夜に来て頂きましたね?」
「はい、今日もチューリップを20本。光里、あとどれにする?」
光里は、ピンクの花びらの縁が白い二色咲きを5本、濃淡のピンクをそれぞれ5本、そしてグリーンのチューリップを5本選んだ。
「優しいピンクにグリーンのチューリップが差し色で美しい花束になりますよ。お客様のセンスが光りますね」
光里のお品書きを見ても思うのだが、彼女にはどこか芸術的センスがあるのだろうと感じる。