眠りにつくまで







川を挟んで都内だという立地の住宅街で聖さんが一軒のお宅の駐車場に慣れた様子で車を止めた。

「到着。だけど、ここは今空き家なんだよ。ここは元々じいちゃんたちがいた家でうちは3軒ほど斜め向かいっていうのかな…あっち。車が1台しか置けないから俺はいつもここ」
「おじいちゃんたちは?」
「じいちゃんは亡くなってばあちゃんが去年施設に入った」
「そう」

チューリップをそっと持たせてくれた聖さんに

「ちょっときんちょする…」
「ぷっ…緊張な」
「あ…人の緊張を笑った」
「ごめん、ごめん…可愛いかっただけだよ」

チュッ…

「…っ…信じられない…」
「何が?」
「実家の目と鼻の先で…ご近所さんもおられるだろうに…」
「いつどこで俺が光里を可愛がってもいいだろ?」
「いいの?…いや…違うんじゃない…かな?」

周りをキョロキョロ見ながら、大きい聖さんに腰を抱かれて押し出されるように歩く私は囚われた宇宙人のようだ。
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