眠りにつくまで







アシスタントと言ったが半分は事務作業をして欲しいこと。もう半分はお兄ちゃんがデザインしたものに色を乗せるとか、角度や大きさを変えたパターン違いを作成して欲しいこと。お兄ちゃんは私にそう説明してくれた。

「俺、Webもやってるけど、紙媒体や商品パッケージが得意なんだよ。デザインを決めてからそれを元にいくつものパターンを作ってクライアントに提示する。光里ちゃんにデザインしてとは言わない。もちろん、やりたくなればやってもいいし」

急に言われても…どうしよう…聖さんを見ると彼はにこりと首を傾けた。

「どうやって働くかは別として、やりたい?俺は出来ると思うよ。買い物のメモもスマホじゃなく手書きしてるだろ?その隅に可愛いお絵かきしてることも、今日のチューリップの色選びも、出来ると思う要素だね」
「あのチューリップは、デザイナーから見てもあのまま商品に反映させたい色合いだよ」
「お花屋さんが上手に花束にしてくれたから…」
「差し色がグリーンのチューリップってなかなか選べないよ」
「…久しぶりに明るい日だったから…昨日みたいに寒ければグリーンでなくパープルのチューリップを入れたと思います」
「合格。採用面接試験に合格です」
「…」

さらに急に合格発表されても…どうしよう…

「光里はどこで迷ってるの?」
「…先月引っ越しして、来月結婚して…仕事も変わるって」
「うん、そうだね…すごい変化が続くよね」
「変化って…変わることって怖いでしょ?」
「そうだね、怖いね。でもわくわくする部分が少しでもあるなら飛び込むのも悪くないと思うよ?結婚まではもう決まってる。それは生涯続くことでもう一生変化はない。でも仕事は何度辞めても続けても変わってもいいんだよ」
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