眠りにつくまで
新しい光
「光里と同じ誕生日になるかな…ならないでくれよ」
12月に入ってから、聖さんは毎日欠かさず私の大きなお腹に向かってそう言う。理由は別々に祝いたいかららしい。
すでに臨月に入り仕事も休職している。忙しいお兄ちゃんには、私の復帰がいつになるかはわからないし、まだ何の戦力にもなれていないので誰かを採用して私の席がなくなってもかまわないと伝えたが、他に採用はしないと言われた。
それに、玲央さんも彼らの仕事の守秘義務やセキュリティ面から他の誰かを採用するならオフィスは別に移れと言った。そう言われればそうだ。
聖さんはたまに家で仕事をする日を設け、クライアントへ直行、直帰も増えた。そして24日の私の誕生日は聖さんの希望通り無事過ぎたのだが、そううまくいくことばかりではない。
25日もいつも通りの朝だった。聖さんを見送り、当然お腹は重いが他には体調に何の変化もないことを自分なりに確認してからパン屋さんまで歩いて行こうとマンションの下まで降りたとき、突然生ぬるい感覚が分厚いタイツに広がる。えっ…立ち止まり足元を見るが大きなお腹で見えない。病院で教えてもらっていた前期破水?一歩下がって見ると地面を濡らしてはいないことを確認するという端から見れば不審な行動を取った私に
「あの…大丈夫ですか?」
遠慮がちに女性が声を掛けてくれたが、私は自分のことに必死で全く気配を感じていなかったので驚いてしまった。
「驚かせてすみません。同じマンションの秋元です。ちょっと様子が…心配で声を掛けたのですが…大丈夫ですか?」