眠りにつくまで






「聞いてみて良かった」

聖斗をベッドに寝かせながら光里が言う。

「そうだね。あのマンションなら近いからいいね」
「紫乃さんからは少し遠いか…」
「どうかな?ママ同士の情報交換のひとつで伝えてもいいんじゃないか?」
「うん。そうする」

昨日で母さんたちのシフト手伝いは終了した。俺も明日からは週に何度か出勤する。

「あれ?お母さんだ…三鷹のお母さん、明日来てくれるって」
「たまに来るって言ってたけど、もう明日って?」
「お友達から大きな梅干しをお土産にもらったって」
「持って来るって言いながら様子見だろうな。光里は昼寝しろよ」
「ありがたくそうするね」
「じゃあ、今も1時間ほど昼寝できるだろ?俺、シチューでも作るよ」
「お願いします、聖さん」

素直に部屋着に着替えて横になる光里はやっぱり眠いのだろう。これからは聖斗と二人の時間も増える。休めるときに休んで欲しい。光里が寝たかと思う頃、聖斗が小さく声を出す。泣いているのではない?光里が起きないように、パッチリと目を開けた聖斗を素早くリビングに連れてくるとオムツを確認する。特に問題なく、ただ目を開けてご機嫌なようだ。

「聖斗、泣かずに起きたんだ。えらいな…もう少しママを寝かせてやってくれ」

小さなコロンとした手を指先でそっとつつくと、その指をきゅっと握る我が子は愛しい。この瞬間、俺が父親だとわかっているのだろうか?

「聖斗の父親になれて俺は嬉しいよ、ありがとう聖斗」
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