我が身可愛い大人たち

 会場では懐かしい友人たちが声をかけてくれたが、雅巳は気もそぞろに美鳥の姿を探す。

 そのうち、彼女と仲の良かったバスケ部員の女性たちが、『美鳥、インフルだって。会いたかったのにね』と噂する声が聞こえた。

 雅巳は落胆し、そんな自分を馬鹿みたいだと思った。

 美鳥に会えたところで、どうするつもりだったのだろう。万が一彼女が自分を忘れていたら、それこそ初恋の思い出がつらいものに変わってしまう。

 ……会えなくてよかったのだ。

 自分を納得させるように言い聞かせ、二十歳の同窓会は終わった。

 平穏な学生生活、そして家業を継ぐための修業に日々を費やし、恋愛からはどんどん遠ざかる。

 大学卒業後、予定通り父親の会社に入ってからは、恋愛を飛び越えて見合い結婚を勧められたりもした。

『まだいいよ。結婚は三十過ぎてからから考える』

 雅巳はいつも両親にそう答え、仕事ひと筋の二十代を過ごす。

 三十歳を目前に控えた頃には副社長の地位に就き、工場の拡張、新たな設備の投入などを積極的に行い、会社の成長に貢献した。

 学校でも部活でも目立たず、自分に自信のなかった雅巳がようやくひとりの社会人として胸を張れると思い始めたその頃。

 十年ぶりに、同窓会の開催を知らせるハガキが届いた。

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