我が身可愛い大人たち

『そうかな? ありがとう。直江くんもカッコイイよ。さすが次期社長って感じ』
『お世辞はいいよ。さっきは変わってないと言っていただろ』
『あ、ごめん。というか、あの頃からカッコよかったよね、直江くんは。ほかの男子と違ってあんまり騒がないと言うか、どっしり構えているというか』
『俺が? ただぼうっとしてただけだろ』

 たわいのない会話だが、雅巳にとっては感動の連続だった。

 同じ部に属していたとはいえ数えるほどしか話したことがないのに、『次期社長』だと知っていたり、過去の雅巳を『カッコよかった』と言ったり。

(あの頃梓沢に告白していたら、もしかして――)

 雅巳が胸の内にそんな期待の灯をともした瞬間だった。

『こら、美鳥~。人妻なんだから抜け駆けしない! 直江くんは地元の星で、みんな狙ってるんだから!』

 十年前の同窓会で美鳥の欠席を残念がっていた彼女の友人が、そんな声をあげながらこちらにやってきた。

 美鳥に腕を絡め、不満そうに口をとがらせる。

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