我が身可愛い大人たち
一方雅巳は、処理しきれない感情で心の中が大渋滞だった。
長年思いを寄せてきた美鳥が人妻になっていた。それだけでもショックなのに、加えて夫婦はセックスレス。美鳥は辛い思いをしながらも、夫婦関係を修復させようとしている――。
弱みに付け込み誘惑したところで、美鳥は応じないだろう。
そんな彼女だから雅巳は好きになった。自分にできることは、陰ながら彼女たち夫婦の幸せを願うことくらいだ。
(こんな思いをするなら、同窓会に参加するんじゃなかった……)
再会した美鳥は、あの頃と同じ魅力的な女性だった。雅巳の中で眠らせていた恋心は、確実に息を吹き返した。なのに、その行き場がない。
それから美鳥たちと別れた雅巳は別の同級生たち思い出話に花を咲かせたが、どうしても美鳥の姿を目端でとらえてしまう。
そんな自分を酒でごまかしているうちに、雅巳は経験したことがないほど泥酔してしまった。
同窓会の後、雅巳は路地裏で嘔吐を繰り返した。最初は心配していた同級生たちも、次第に愛想をつかし始める。
そんな中、最後まで彼を心配し背中をさすってくれたのは、美鳥であった。