Again〜今夜、暗闇の底からお前を攫う〜
美月さんは二年前の家を出た日から聡さんと同棲している。

最初は美月さんが聡さんの家に居候していたが、なんやかんやで付き合い、今では同棲して愛を育んでいる。

前に下っ端が聡さんの彼女だと知らずに美月さんをナンパして、肋骨四本折られるほどボコボコにやられていた。

普段は温厚だが美月さんが関わると聡さんはおっかなくなることを長年Againの暴走族にいる人間は痛いほど知っている。


「あーあの女が現れなければな〜」

「まだ言ってるよ」

「それカオルの前で言ったらまた喧嘩になるからやめろよ」

「そもそもカオルはなんであんな女に執着してるわけ?弱味でも握られてんのか?」


それもそうだ。

カオルが執着する女は妹の奈都ちゃん意外いない。

それが私も気になっていた。

そもそもカオルは見た目からして不良だし、その不良の妹がいくら良い子だからって、不良と少しでも接点を持つくらいなら綺月は家庭教師なんて断りそうなのに。

聞きたいことは山ほどある。

でも綺月に聞いてしまえば、自分がカオル達と接点があるのだとバレてしまう。


「にしても最近カオルも来ないよな」


カイと言い合いになったあの日以来、カオルもめっきり姿を現さなくなった。

もともと、バイトの掛け持ちやら妹の面倒で頻繁に溜まり場に顔を出すわけでもなかったが、私たちとは三日に一回は会っていた。

それなのに今は連絡しても既読すらつかない。

私たちはもう気付いていた。

綺月と美月さんの仲を修復しない限り、気まずくなったこの空気を正すことはできないということに。
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