Again〜今夜、暗闇の底からお前を攫う〜
【美月side】


「美月」


鏡の前で立ち尽くしている私に聡が声をかける。


「そろそろ時間じゃないのか?」

「え?本当だ!」


聡の言葉に立てかけられた時計を確認すると、いつの間にか家を出なくてはいけない時間になっていた。

私は高校三年生の時自分の家を出て、一年自分を見つめ直してから、薬学部のある大学を受けた。

無事に合格して今は製薬開発者になるため勉強をしている。


「聡、今日は何時に帰ってくるの?」

「今日は溜まり場に顔出すから遅くなる。
美月は?一緒に行くか?」

「…いや、私も遅くなりそうだから」

「…そうか」


綺月と会った日以来、私はこうして聡の誘いを見え透いた嘘で断っている。
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