Again〜今夜、暗闇の底からお前を攫う〜
「それって逃げてるだけだろ?」


ゴクリと喉が鳴る。

逃げてる…?


「傷つきたくないから逃げてるだけだろ。
綺月のためだとか言って、結局は自分のためだろ」


心臓がドクンと嫌な音を立てる。

私は自分のためにあの家から逃げた。

だけど、私はまた自分を優先するために綺月から逃げようとしていた。


「家を出て行って後悔してるんだろ?
あんな別れ方正解じゃないってずっと負い目感じてるんだろ?
なのになんでまた同じことしようとしてんだよ」


綺月のためだとか言って、私は逃げているだけなの?

だから二年の間、一度もインターホンを押せないでいるの?

会いたいと思えば会いに行ける距離だったし、時間も沢山あった。

今、修復できるチャンスも与えられている。

なのに、私はまだ逃げようとしているの?
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