Again〜今夜、暗闇の底からお前を攫う〜
カオルはそう言うと、だらけていた身体を起こして座り直す。

こうして二人っきりで話すのは久しぶりな気がした。

私がカオルと初めて会ったのはAgainの溜まり場だった。

第一印象は同い年なのにやけに大人っぽくて、なんでも見透かしそうな目が聡と似ていて怖かった。

今と違って昔はもっと近寄り難いオーラを出していたらしいが、幸人達に会ってからは大分優しくなったと、昔からAgainにいる人達が口々に揃えてそう言っていた。

だけどそんなカオルを聡はずっと気にかけていた。

聞くと、聡のほうがカオルをAgainのメンバーに誘ったらしい。

聡は面倒見が良く、だから私のことも放っておけないと思ったのだろう。

私のように聡を慕う仲間は沢山いたが、聡自身が誰かにこんなにも執着している姿を見るのは初めてだった。

「カオルのことなんでそんなに気になるの?」と聡に聞くと、ざっくりとだけど聡はカオルの家庭環境を教えてくれた。

高校生の時に両親を亡くし、妹を養うため高校を中退し、その後もいくつものバイトを掛け持ちして妹と暮らしていると。

それを聞いた時、自分とは笑ってしまうほど正反対だと思った。

自分を捨てたカオルと、自分を守るために妹を捨てた私。

正反対の私たちを聡は見つけて、Againという居場所を与え、繋ぎ合わせた。

そして、この瞬間が来るのを待っていたように、カオルが私を現実から引き戻そうとしていた。


私は飲み物を注文すると、早速話の本題に切り込む。


「綺月のことだよね」


私から話を促すと、カオルは組んでいる足を下ろした。


「綺月のことどうするつもりだよ」

「…どうするって?」

「このままでいいのか?」

「だから言ったでしょ。
綺月が私と関わることを望んでないなら私は綺月の気持ちを優先するって」


店員が持ってきた紅茶をすぐに口に含む。
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