Again〜今夜、暗闇の底からお前を攫う〜
さまざまな学校の制服を着た人たちが、塾に出入りする姿をじっと見つめる。

この人たちの中で、自分の意思で塾に通っているのは何人いるのだろう。

私は、いつまで勉強を優先しなければいけないのだろうか。

先の見えない暗闇に不安を抱いていた時期もあったけど、いつからか何も感じなくなっていた。

私はただこれからも、母の言われたとおりに生きるだけだ。

その時、視界にバイクが割って入ってくる。

全部で４台のバイクが、立て続けに路肩に停車する。

奇抜なバイクに負けじと彼らも奇抜で目を引く髪色をしていた。

彼らは何やら楽しそうに大声で笑っていて、塾に出入りする学生が迷惑そうな顔でチラチラと見ている。

そんな奇抜で目立つバイクの中でも一際存在感を放っていたのが、明らかに場違いな真っ黒に染まったバイクだった。

そういえば、お姉ちゃんも家を出ていった日、あんな真っ黒なバイクの後ろに乗って消えていったなぁ。

昔のことを思い出しながら彼らを見ていると、その中の一人の男子と目が合う。

真っ黒なバイクと比例するような黒髪に、目にかかるほどの前髪を鬱陶しそうに掻きあげながら、切れ長の目が私を捉える。

吸い込まれそうな瞳と、綺麗な顔立ちに目を奪われる。

その瞳から逃げるように、私は慌てて顔を背け、視界から彼らを消す。

驚いた……まさか目が合うとは……。

お姉ちゃんの件もあって、いつもならあんなバイクを乗り回してる類の不良を見ると無性に腹が立つ。

なのにどうして目が合った瞬間、一瞬ドキッと胸が高鳴ったのだろうか。

私はもう一度彼らの方を盗み見すると、早々とまたバイクで走り去って行った。
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