Again〜今夜、暗闇の底からお前を攫う〜
「時々、綺月見てると感じるの」


私はストローでオレンジジュースを意味もなく混ぜる。

かさ増しのように多めに入った氷がグラスと接触しカランカランと軽快な音を鳴らす。


「突然消える人ってこういう人のこと言うのかなって」


綺月は私の前では笑っているが、一人でいる時は時々死んだような目をする。

どこを見ているのか分からないし、息をしているのかさえ不安になる。

慌てて声をかけると、いつも通りに笑ってくれる。

それが物凄く怖かった。


「綺月が廊下で倒れた時血の気が引いた。
このまま目を覚まさないんじゃないかって」


その時のことを思い出すと、恐怖で手が震える。

いつか消えてしまうんではないかという恐怖と、自分はずっと繋ぎ止めていれるんだろうかという不安が私の脳内を支配する。

自分の存在は綺月にとってはそこらへんに転がっている石ころと同じレベルではないのかと綺月のことを考える度に思う。
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